テロ対策施設先送りについてパブコメ文例集公開〔原子力市民委員会〕

テロ対策施設先送りについてパブコメ文例集公開〔原子力市民委員会〕

 原発のテロ対策に必要な「特定重大事故等対処施設」(特重施設)の建設を先延ばしする方針を原子力規制委員会が11月に発表し、パブリック・コメントを募集しています。新規制基準では2018年7月までの設置を求めていましたが、さらに数年先まで特重施設が無いまま運転できるように規制を緩める案です。原子力市民委員会は、これに強く反対しており、パブコメ文例集を公開しました。パブコメの締め切りは12月13日と迫っていますが、多くの方に活用して頂ければ幸いです。

中国電力株式会社「特定重大事故等対処施設について」(2014年11月)より 航空機の衝突などテロ攻撃への対処や、原子炉格納容器の破損防止のため、中央制御室が壊れても原子炉を冷却できるように、特重施設は緊急時制御室や、電源、注水設備などを備えることになっています。再稼働した九州電力川内原発には特重施設がまだありませんが、この先延ばし案が通れば1号機が2020年3月、2号機は同年5月までの猶予が認められます。その他の多くの原発については原発本体の工事認可を受けてから5年先まで設置が延ばせることになります。また川内や四国電力伊方原発、関西電力高浜原発など加圧水型炉のシビアアクシデント対策に必要なベントフィルタについても猶予されたまま再稼働が進んでいます。

 原子力市民委員会のパブコメ文例集では、以下のような反対理由を紹介しています。

◯そもそも2018年まで猶予を設けていたこと自体、安全をないがしろにしていたと言えますが、今回はそれを更に改悪するものです。
◯11月13日にパリで起きた無差別武装攻撃を見てもわかるように、「テロ」は意表を突いて実行されます。標的は警備が手薄で大きな被害が発生する場所が選ばれるので、先送りはリスクを拡大します。
◯特重施設の設置が再稼働の条件にならなければ新規制基準そのものが意味をなさなくなります。テロリストは特重施設の完成を待ってから事を起こすわけではなく、むしろ備えができる前に襲撃するかもしれません。
◯猶予期間を設けることは、規制当局としての自覚の欠如を宣告しているのに等しいでしょう。規制委は先延ばし理由を「原発本体の審査が長期化しているから」と説明していますが、電力会社から見れば、審査が長引くように策を講じれば規制委を操れることになってしまいます。

 原子力市民委員会は7日、以下の3項目を規制委に要請しました。

1.特重施設の設置期限を、本体施設工事認可後5年以内に変更する案を撤回すること。
2.新規制基準制定から5年間の経過措置が終了した後は、特重施設が整備されていない原発の稼働を認めないこと。
3.今後、新規制基準の適合性審査の申請に際しては、特重施設に関わる申請を同時に提出することを義務づけること。

 福島事故の根源的原因の一つが「規制当局が事業者の虜になっていた」ことは、国会事故調で厳しく指摘されています。電気事業者側の事情で設置が遅れるのであれば、それまで再稼働は認めないとするのが、規制当局として当然の判断であり、5年猶予は、ふたたび原子力規制委員会が事業者の虜となりつつあることを示しているように見受けられます。

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リンク:
原子力規制委員会「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の規準に関する規則等の一部を改正する規則(案)に対する意見募集について」(2015年11月13日)
https://www.nsr.go.jp/procedure/public_comment/20151113_01.html
原子力市民委員会「原子力規制委員会による「特定重大事故等対処施設」設置期限変更に対するパブリック・コメント文例集を公開しました」(2015年12月2日)
http://www.ccnejapan.com/?p=6052
原子力市民委員会「声明『「特定重大事故等対処施設」のさらなる設置延長は不当である』を発表しました」(2015年12月7日)
http://www.ccnejapan.com/?p=6103